01.眼瞼下垂と眉下切開

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最近患者様から他院で眼瞼下垂と診断され、眉下切開まゆしたせっかいの手術で治ると言われたけれど、眉下切開ではダメですか?と聞かれることが多くなってきました。

眼瞼下垂がんけんかすいがある人が眉下切開まゆしたせっかいの手術をして眼瞼下垂が治るのか?

答えは「No」です。
治る訳がない・・。

眼瞼下垂は上まぶたを上げる機能に問題が生じてしまい目が開きにくくなってしまっている病態です。
問題が生じてしまった部分(筋肉や腱膜)を治さない限り絶対に治ることはありません。

眉下切開は上まぶたの皮膚のたるみを切除(取り除く)するだけの手術なので、上まぶたのたるみがとれて目元がすっきりとはします。でも、決して眼瞼下垂が治っているわけではありません。しかし、百歩譲って考えると眼瞼下垂という目を開く機能が弱っている状態から上まぶたのたるみが物理的に数グラム取り除かれることにより目を開く能力が弱くても少し楽に目が開けられる様に感じるということはあると思います。イリュージョンの治療です。

でも全くもって眼瞼下垂症の根治術ではありません.

眉下切開で切除する部位
眼瞼下垂で問題となる筋肉(腱膜)の部位
眉下切開術前正面
眉下切開術後正面

それでは何故眼瞼下垂が眉下切開で治ると謳われてしまうことが多いのか?

これには色々な理由が考えられます。

  1. 眼瞼下垂ではなく、上まぶたのたるみが多く眼瞼下垂の様に見えてしまう「偽眼瞼下垂」と呼ばれる状態を「眼瞼下垂」と診断して眉下のたるみだけを切除している。
    「偽眼瞼下垂」を「眼瞼下垂」と信じてそう診断しているのか、「偽眼瞼下垂」と知りながらも敢えて「眼瞼下垂」と診断をしているのかは分かりません。
  2. 手術をする側としては眉下切開の方が手術は格段に楽です。眉下切開は皮膚を切除して縫合するだけなのでホクロを切除するのと変わらず、手間もなく手術不慣れな医師でも楽に行えます。逆に、正式な眼瞼下垂の手術(筋肉などを触る手術)は目を開く筋肉などを細かく操作しなくてはならず、非常に熟練を要する手術です。上述の通り、皮膚のたるみを少しでも取り除けば、術直後目の開きは一時的にとても軽く感じて、患者様の満足感も得ることができるため、手術に不慣れな医師が広く行なっている様に思います。
  3. 二重の部分を切開すると傷が目立つ、二重が変になるなど色々な誤情報が拡散しているため二重部分で切開を希望する人が少ない。眉下切開は傷跡が目立ちにくく二重部分で切開するよりも傷跡が目立たないと誤解されていることもあります。
  4. 眼瞼下垂に対して眉下切開を提示する医療従事者は眼瞼下垂の知識がないのか、誤認している可能性があります。

眼瞼下垂の人が眉下切開をしても治ることは絶対にありません。
眼瞼下垂ではありませんが、例えば

  • 筋肉が断裂してしまった人は筋肉を縫合しなければ治りません。
  • 神経が切れてしまった人は神経を縫合しなければ治りません。
  • 血管が切れてしまった人は血管を縫合しなければ治りません。
  • アキレス腱が切れてしまった人はアキレス腱を縫合しなければ治りません。

だから、

  • 上まぶたの筋肉などの動きが悪くなってしまった人はその部分を治さなければ治りません。

当たり前のことなのですが、問題が生じてしまっている部分を治さなければ問題は解決しません。これは眼瞼下垂の手術に限ったことではありません。

逆に眉下切開をしたら眼瞼下垂が治ったという患者様はそもそもの状態が眼瞼下垂ではなく、まぶたのたるみがあっただけに過ぎなかったと思います。本来その状態は眼瞼下垂ではなく「偽眼瞼下垂」であり、目の開きが悪くなる真の眼瞼下垂という病気ではありません。

眉下切開をしたにも関わらず眼瞼下垂が治っていないと当院を訪れる患者様は多数おられます。それもそのはず。眼瞼下垂の治療を受けていないのだから治っていることもなく、必然的にそうなってしまいます。

そして眉下切開をしてしまうと嫌なことが起こります。
眉下切開をすると眉毛の下の皮膚を切り取るため眉毛の位置が物理的に下がります。眼瞼下垂手術を行うと目を楽に開けることができる様になり、おでこの力が抜け、眉毛が下がります。このため、眼瞼下垂の手術前に眉下切開手術を受けている患者様は術後に眉毛と二重の間隔(スペース)がとても狭く感じてしまうことが多い様に思います。

眼瞼下垂と診断をされた際には安易に眉下切開手術を受けるのではなく、今一度よく考えてみてください。


生まれながら眼瞼下垂(先天性眼瞼下垂)の人はそう多くない。

ハードコンタクトレンズをしていると瞼下垂症になると考えられている。

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