一般的にハードコンタクトレンズを長年装着していると瞼下垂症になると考えられています。
実際10年近くハードコンタクトを使用していると大抵の人はハードコンタクトレンズ性眼瞼下垂症になっています。10年以上ハードコンタクトをしているにも関わらず眼瞼下垂症になっていない人もたまにおりますが、かなりの強者と思います。
ハードコンタクトレンズを外す時に目尻を引っ張るから眼瞼下垂になってしまったと他院で言われたとよく耳にしますが本当にそうなのだろうか?医師の多くもその様に思っている様に思います。
でも、毎日まぶたの手術をしてまぶたの中の構造を見ている私は全くそうは思っておりません。ハードコンタクトを外す時に目尻を引っ張っても眼瞼下垂になどならないと思っています。恐らく眼瞼下垂の治療に精通している医師はその様な認識はないのではないだろうか?と思います。
ハードコンタクトを長年使用していた患者様の手術をすると腱膜が瞼板から外れて腱膜性眼瞼下垂になっているのは当然のことながら、大抵の人は腱膜よりも眼球側にあるミュラー筋という筋肉がものすごく薄く伸びてしまっています。手術をしながら眼球がどの方向を向いているのかはっきりと透見できる程薄くなってしまっています。これはどう考えても眼球の上に乗っている硬いガラスの板(ハードコンタクト)に結膜とミュラー筋が負けてしまい全体が物理的に薄く伸びてしまったのだと思います。
これはどう考えてもコンタクトを外す時になっている現象ではないでしょう。
皮膚を引っ張ったら皮膚や皮下組織が伸びる可能性はあります。
でも、ハードコンタクトを長期使用している人の瞼の中の状態はそうではありません。必ず眼球に接している結膜とミュラー筋が異常なほどに伸びている状態です。
これは物理的にハードコンタクトに接触してしまう部分が伸びて
ハードコンタクトを外す時に目尻を引っ張ることで眼瞼下垂になってしまうというのは根も歯もない都市伝説なのではないだろうか。
因みにソフトコンタクトレンズは使用していても眼瞼下垂にはならないと言われています。確かにそうなる確率は格段に少ないと思います。ただ、眼球の上に何も乗っていない自然な状態ではないので、絶対にならない訳ではないと思います。
「では、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズと結局どちらを使った方が良いのですか?」これもよく聞かれる質問です。
答えは・・「どちらでも良い」ということになります。
何故なら質問をする医師により違う返答をするからです。形成外科医と眼科医では診ている部分がことなるため、真逆のこと返答をすることになります。
形成外科医はあまり眼球のことは診てなく、まぶたを気にかける医師の集団なので、ハードコンタクトレンズをするとまぶたの機能に影響が生じてしまうため、まぶたの機能に影響の少ないソフトコンタクトレンズを推奨します。
しかし、眼科医は眼球を治療する医師の集団なので、眼球に影響の少ないものを選ぶことになり、面積の大きなソフトコンタクトレンズよりも面積の小さいハードコンタクトレンズを推奨します。
この様に真逆の返答をします。それぞれの科で保護したいと思っている組織が異なるため、真逆の返答になります。でも、それぞれ正しいことを言っています。だからまとめると、上述した様に「どちらでも良い」という回答になってしまいます。そして一番良いのはもしかしたら眼鏡なのかも知れないということになってきます。