眼瞼下垂を主訴に来院される患者様からよく聞く不思議な話があります。
他院で診察を受けたら眼瞼下垂症と診断された。でも、眼瞼下垂の手術は保険適用範囲内だが、脂肪徐除去する場合は別途数十万円必要となると言われたといいます。
そして驚くことに、その話は都内で保険診療を基本として眼瞼下垂を専門に行なっていると謳っている○○クリニックであるというのです。
そんなことあってはならないし、許されるわけもないのです。関東信越厚生局(厚生労働省)では同じ施術に対して保険診療と自由診療を混ぜる、いわゆる混合診療は禁止しています。要は二重取りになってしまいます。
そんなことをいうクリニックがあるのであれば関東信越厚生局に通報したら良いと思います。恐らくその医師は保険医の資格を剥奪されると思いますし、その医療機関は保険診療を行えなくなるかも知れません。保険診療を行なっている医師は医師免許だけでなく、保険医の免許というものも持っています。また、同様に保険診療機関は保険診療をする許可を得ています。健康保険をどの様に扱うかは厚生局から指導されており、混合診療はみとめられていないことも知っているはずです。
同じ治療に対して保険診療と自由診療を同時に行ってはならないという簡単な決まりがあります。
でもそれ以前の話として、目を開くために邪魔な脂肪がある場合は、その脂肪をきちんと除去をしなければ眼瞼下垂を治すことはできません。だから眼瞼下垂の手術の際、開瞼を邪魔する脂肪が存在する場合は開瞼を改善するために必然的に健康保険の手術の範囲内で除去することになりますし、除去しなければ眼瞼下垂は改善しません。でも、除去する必要がない脂肪は当然除去しません。無意味に必要な脂肪を除去してしまうと目の上が凹んでしまうこともあります。
治療をする上で必要なことは行わなければならないし、必要なことを行わなければ完全には治る訳ありません。でも、治療に不可欠な脂肪除去を別途自費になる?おかしな話です。
例えば、癌治療などで悪い部分は切り取りますが、リンパ節郭清は自費になりますという医師がいるのだろうか?脂肪切除をする場合は別途自費になりますというのはそういう理屈でしかありません。
ただし、眼瞼下垂の治療をする上において医師が眼窩脂肪は不要と判断して除去する場合は保険の適用となります。でも、患者様が脂肪を除去して欲しいとお願いする場合は当然自費になります。胃カメラなども医師が必要と判断して行う場合は保険適用となりますが、患者様がやりたくて行う場合は自費扱いになります。人間ドックなどがそれにあたります。
また、患者様が脂肪除去を希望する場合、眼瞼下垂の治療は保険適用となり、脂肪除去に関しては自由診療という扱いではなく、眼瞼下垂の治療もまとめて自由診療となります。全部保険診療で行うのか、全部自由診療となるのかという分け方になり、この部分は保険診療で、この部分は自由診療とするのは混合診療となり違法な行為となってしまいます。
「眼瞼下垂と保険適用」に記載していることと同じことになるのですが、患者様にとっても全額自由診療となるよりも、眼瞼下垂治療は保険適用で、脂肪除去は自由診療となる方が負担が少なく済むと考え、それを患者様側でも了承してしまうのかも知れません。でも、本来は全部保険なのか、全部自費なのかにしなくてはならないのです。
非常に残念なことではありますが、なぜか眼瞼下垂を扱う医療機関の中には混合診療をよしとしてしまう医療機関もあるようです。しかし、そんなことを言われた方はそれを信じるのではなく、関東信越厚生局などに相談をしてみては如何でしょうか。