「まぶたが重たい」、「まぶたが開きにくい」と眼瞼下垂の診断希望で来院される患者様を診察すると大きく2つに分類することができます。「まぶたが重たい」、「まぶたが開きにくい」という症状は必ずしも「眼瞼下垂」というわけではありません。
- まぶたを開ける筋肉や腱膜などに問題が生じて、まぶたを上げる機能が障害されてしまっている状態が「眼瞼下垂症」です。
- 逆に、まぶたを開ける筋肉などには問題がないものの、まぶたを閉じる機能が強く働きすぎてしまい、まぶたを閉じてしまう(開けにくくなってしまっている)状態は「眼瞼痙攣」です。
いずれも目を開きにくい状態ではあるが、簡単に言うと開けることができずに「開けられない人」と目を閉じてしまうことで「開けられない人」ということになります。
そして厄介なことに腱膜性眼瞼下垂症の患者様(正常に目が開いている様に見えてしまう腱膜性眼瞼下垂症の代償期の患者様含む)は時間経過とともに眼瞼痙攣が発症してしまう恐れがあります。
正常にまぶたを開けることができる人はまぶたを開く筋肉の方が閉じる筋肉よりも強いので普通に目を開け続けることができできます。
正常に目が開いている様に見える腱膜性眼瞼下垂の代償期の人は腱膜が瞼板よりはずれているため、ミュラー筋が上眼瞼挙筋の収縮により引っ張られる。そうするとミュラー筋に存在するセンサー(機械受容器)が引っ張られ青斑核が刺激される。適度にセンサーが引っ張られている正常な状態では青斑核が刺激されて覚醒など適度に調整されるので問題はないが、過度に引っ張られ続けると最終的にはまぶたを閉じる筋肉の収縮が強くなってしまい痙攣が始まってしまいます。
逆にいうと、腱膜性眼瞼下垂を治療することで痙攣を抑えることもできるはず。痙攣を合併してしまっている腱膜性眼瞼下垂症の治療をする際は術中から痙攣が抑えられる様に細心の注意を払いながら治療に臨んでいます。
しかし、眼瞼下垂の治療の仕方次第では逆に眼瞼痙攣が発症してしまうこともあるんです。わずかな調整の差で吉とでることも凶とでることもありえます。
当院には眼瞼痙攣を併発している眼瞼下垂症の患者様が多くいらっしゃいます。適切な手術処理をすることで痙攣が術直後から消失することもあります。腱膜性眼瞼下垂の治療の際は眼瞼痙攣も念頭に置きながら治療を進める必要があると考えています。