MRDとはMargin reflex distanceのことで、瞳孔中心から上眼瞼縁までの距離のことです。眼瞼下垂の程度の指標として使われることが多く、眼瞼下垂のことを調べると登場することが多いのではないでしょうか。
ただ、実診療において私の場合MRDを考慮したことはあまりありません。眼瞼下垂があるのかないのか診断するにあたりMRDはほぼ関係ないと思っているからです。そもそも腱膜性眼瞼下垂症の代償期の人はMRDが正常なので、眼瞼下垂の有無を調べるためにどこまでMRDが有効なのか?
MRDはあくまで瞳孔(瞳)とまぶたの位置関係でしかなく、眼瞼下垂の有無の指標とはならないと私は思っています。MRDを眼瞼下垂の指標にすることで一重の様な正常な人でも、逆に眼瞼下垂と診断されてしまうことになる。また、目を開いている時に正常に見える腱膜性眼瞼下垂の代償期の人を見逃してしまうことにも繋がります。眼瞼下垂の有無をちゃんと区別できないのであれば、その存在意義はないように思います。
眼瞼下垂はまぶたの動きが悪くなった状態なので、瞳の露出程度などの見た目だけでは判断することはできません。
眼瞼下垂はよくまぶたのアキレス腱が切れてしまった様な状態と例えられることが多いけれども、実際足のアキレス腱が切れている状態を診て、外見だけでアキレス腱が切れていると診断できるのだろうか?足を動かしてもらい、その動きを診て初めてアキレス腱が切れているかどうかを判断することができるのではないだろうか?足の外見だけでアキレス腱が切れていると診断できる医師はいないのではないだろうか?(いるかも知れませんが・・。)
だからそもそも論としてMRDという見た目から判断する基準を用いて眼瞼下垂の診断をしようとすることがおかしな話なのだと思っております。もちろん腱膜性眼瞼下垂が進み非代償期となればMRDは悪化してくるし、逆に考えるとMRDで眼瞼下垂と診断される状態はもうかなり眼瞼下垂が進んでいる状態なのかも知れません。MRDを用いても軽度の腱膜性眼瞼下垂や代償期は診断することができないと思います。
眼瞼下垂の初期はMRDは正常なことが多いのが現状です。
問題はMRDが正常な患者様の手術が保険適用なのかどうなのか?ということ。MRDが正常でも眼瞼下垂の症状が強く出る人は沢山おり、そういう患者様は眼瞼下垂が軽度なのではなく重症なのだと私は思っています。ただ、MRDでしか眼瞼下垂を診断しない場合、眼瞼下垂の有無を正しく診断できなくなってしまうというだけの話です。
- 眼瞼下垂の有無はMRDだけでは診断できない。
- 眼瞼下垂の診断は医師により本当に異なる。
- 私の診断基準が正しいかどうかは分からない。
でも、まぶたの動きを細かく観察することで出てくる診断は狂うことはありません。
たまに眼瞼下垂を装って来られる患者様も見抜いてしまいます。診察の時に目細くしたままあまり大きく開こうとしない患者様がいます。目の細さを診ている訳ではなく、まぶたの運動機能を診ているので演技をしたとことで我々には見抜けてしまいます。目を細めることで眼瞼下垂と診断をされたいのでしょうか?理由は様々なのでしょうが・・。
でも、眼瞼下垂かどうか気になる方は一度当院やそれを専門としている保険医療機関を受診することをお勧めします。
他院で眼瞼下垂と言われ納得がいかない方、逆に眼瞼下垂ではないと言われ納得いかない方、当院ではMRDに頼らない診断を行なっております。気が向いたら一度受診をしてみては如何でしょう。